2010年08月26日
人生の転落劇場
被告人は,平成元年8月20日ころ,事前の連絡をしないで,いきなり家
財道具をトラックに積んで,広島県福山市に住むLやVのもとに赴き,Vに頼ん
でアパートを探してもらった上,保証人になってもらい,Lが経営するL工業有
限会社に配管工として就職し,その後,間もなくKとの同居生活を始めた。被告
人は,しばらくの間は,雑用を含めてまじめに勤務していたが,身元引受人であ
るLに相談をすることなく,自分の判断で仕事を進めたり,自動車を購入したり
し,同年9月下旬には,サラ金業者からの借入れをするようになった。また,仕
事を終えた後や休日にパチンコ店に通い,次第に熱中するようになり,たまに勝
つこともあるが,1万円から2万円くらい負けることが多く,1日に4万円とか
7万円くらい負けることもあり,負けを取り戻そうとして,さらに金をつぎ込む
ようになり,Kや母親などからパチンコをやめるように注意されても改めなかっ
た。そのため,平成2年4月,正式にKと婚姻し,同年11月には長女が誕生し
たにもかかわらず,L工業から支給される給料や健康飲料の配達などのアルバイ
トをして得た収入だけでは,生活費や遊興費などが足りない状態が続いていた。
そして,母に何度も金を無心したほか,生活費やKが支払いのために保管してい
た光熱費まで取り上げてパチンコにつぎ込み,パチンコ代や生活費,借金の返済
資金等に充てるために,さらにサラ金業者からの借入れを繰り返し,数百万円に
上る借金を抱えるに至り,母に頼んで100万円弱の返済をしてもらったことも
あるが,その後も,借入れを続けた。また,L工業が忙しいために後日工事を行
うことで断った工事を,Lの二男と二人で無断で受注し,その利益を折半してい
たところ,平成3年11月20日,このことがLに発覚してL工業を解雇された。
被告人は,L工業の同業者方に配管工として就職したが,平成4年1月こ
ろには,刑務所仲間の男性を通じてAと知り合い,同人らをこの勤務先に就職さ
せたり,アパートを世話するなどし,特にAと相性が合い親しくなった。そし
て,同年2月,同僚と口喧嘩したことなどが原因で被告人が退職すると,間もな
くAも退職し,同年3月中旬ころから,Aと共同して茶の訪問販売を始め,広島
県三原市内に住んでいる被告人の姉Mから,B(明治38年3月20日生)を含
む10軒程度の紹介を受け,B方を訪問して茶を買ってもらうなどしていたが,
被告人は,足の悪いBに同情して,同月24日,Bを自動車に乗せて病院まで送
迎したり,薬局まで薬を取りに行ったりした。
しかし,茶の訪問販売では思うように利益が上がらず,被告人は,サラ金
業者等に対する600万円余りの借金返済に切羽詰まり,同月28日,福山市e
団地に停車した自動車の中で,Aと金策の方法について相談し,Aから盗みでも
するかと言われたのに対し,被告人は,犯行が発覚した場合には仮出獄が取り消
されて長期の服役になることを考え,強盗を提案し,Bが金を貯めているかも知
れないと考えて同女に狙いを付け,さらに,犯行の発覚を防ぐためには顔を知っ
ているから殺害するしかないと話し合い,強盗殺人の実行について謀議を遂げ
た。そして,Aが,コンビニエンスストアで,荷造り用のビニール紐と軍手二双
を購入した。
被告人らは,同日午後7時ころ,B方を訪れ,室内に入れてもらい,Bに
借金を申し込むと貸してもらうことができたため,現金をかなり持っているもの
と判断し,Bを殺害する意思を固めた。そして,Bを外に連れ出して殺害した
上,B方に立ち戻って金品を強奪する旨意思を相通じ,甘言を弄してBをドライ
ブに誘い,同日午後10時ころ,被告人が運転する自動車にBを乗車させて出発
し,人気のない殺害場所を探し回り,翌29日午後2時ころ,本件犯行現場の林
道に至り,強盗殺人の犯行を遂げた。
(2) 以上の認定事実を前提に,本件犯行に至る経緯及び犯行の動機についてみ
てみると,被告人は,昭和48年10月に強盗殺人という重大事件を起こし,無
期懲役の刑を受けたが,まじめな服役態度や社会内での更生及び贖罪の意思を示
していたことに加え,親族による身元引受けや就職先が確保され,更生環境が整
備されていることが評価されて,服役開始後約14年9か月という比較的早い段
階で,仮出獄を許されたのであり,無期懲役の受刑者としては,かなり恵まれた
環境の下で仮出獄の生活を開始したということができる。それにもかかわらず,
賭け事に手を出さないという仮出獄の条件に反して,パチンコにのめり込んで借
金を繰り返し,妻や母からパチンコをやめるように忠告されても従わず,不審に
思った保護司から生活状況を尋ねられた際も,正確な報告をしないでごまかし,
適切な生活指導を受ける機会を自ら逸している。そして,勤務先に対する背信行
為や同僚と喧嘩したことなど身勝手な理由により,解雇されたり退職したりし
て,自ら安定した収入の途を閉ざし,無計画な生活を送り,いよいよ借金の返済
資金に窮し,姉の紹介により好意で茶を購入してくれた被害者に狙いを付け,し
かも,Aから盗みを提案された際,被告人は,無期懲役刑の仮出獄中であること
から,小さな盗みでも発覚した場合には仮出獄が取り消されて長期の服役にな
る,どうせやるなら大きな犯罪をやった方が良いなどと考え,一攫千金を狙うと
ともに,犯行が発覚しないようにするため顔見知りの被害者を殺害することとし
て,本件強盗殺人を計画し,実行したのである。被告人は,仮出獄の趣旨を逸脱
して,遊興に溺れた生活を送っていたのであり,本件犯行に至った経緯は甚だ芳
しくなく,犯行動機の悪質性,反社会性は顕著であり,酌量の余地は全くない。
財道具をトラックに積んで,広島県福山市に住むLやVのもとに赴き,Vに頼ん
でアパートを探してもらった上,保証人になってもらい,Lが経営するL工業有
限会社に配管工として就職し,その後,間もなくKとの同居生活を始めた。被告
人は,しばらくの間は,雑用を含めてまじめに勤務していたが,身元引受人であ
るLに相談をすることなく,自分の判断で仕事を進めたり,自動車を購入したり
し,同年9月下旬には,サラ金業者からの借入れをするようになった。また,仕
事を終えた後や休日にパチンコ店に通い,次第に熱中するようになり,たまに勝
つこともあるが,1万円から2万円くらい負けることが多く,1日に4万円とか
7万円くらい負けることもあり,負けを取り戻そうとして,さらに金をつぎ込む
ようになり,Kや母親などからパチンコをやめるように注意されても改めなかっ
た。そのため,平成2年4月,正式にKと婚姻し,同年11月には長女が誕生し
たにもかかわらず,L工業から支給される給料や健康飲料の配達などのアルバイ
トをして得た収入だけでは,生活費や遊興費などが足りない状態が続いていた。
そして,母に何度も金を無心したほか,生活費やKが支払いのために保管してい
た光熱費まで取り上げてパチンコにつぎ込み,パチンコ代や生活費,借金の返済
資金等に充てるために,さらにサラ金業者からの借入れを繰り返し,数百万円に
上る借金を抱えるに至り,母に頼んで100万円弱の返済をしてもらったことも
あるが,その後も,借入れを続けた。また,L工業が忙しいために後日工事を行
うことで断った工事を,Lの二男と二人で無断で受注し,その利益を折半してい
たところ,平成3年11月20日,このことがLに発覚してL工業を解雇された。
被告人は,L工業の同業者方に配管工として就職したが,平成4年1月こ
ろには,刑務所仲間の男性を通じてAと知り合い,同人らをこの勤務先に就職さ
せたり,アパートを世話するなどし,特にAと相性が合い親しくなった。そし
て,同年2月,同僚と口喧嘩したことなどが原因で被告人が退職すると,間もな
くAも退職し,同年3月中旬ころから,Aと共同して茶の訪問販売を始め,広島
県三原市内に住んでいる被告人の姉Mから,B(明治38年3月20日生)を含
む10軒程度の紹介を受け,B方を訪問して茶を買ってもらうなどしていたが,
被告人は,足の悪いBに同情して,同月24日,Bを自動車に乗せて病院まで送
迎したり,薬局まで薬を取りに行ったりした。
しかし,茶の訪問販売では思うように利益が上がらず,被告人は,サラ金
業者等に対する600万円余りの借金返済に切羽詰まり,同月28日,福山市e
団地に停車した自動車の中で,Aと金策の方法について相談し,Aから盗みでも
するかと言われたのに対し,被告人は,犯行が発覚した場合には仮出獄が取り消
されて長期の服役になることを考え,強盗を提案し,Bが金を貯めているかも知
れないと考えて同女に狙いを付け,さらに,犯行の発覚を防ぐためには顔を知っ
ているから殺害するしかないと話し合い,強盗殺人の実行について謀議を遂げ
た。そして,Aが,コンビニエンスストアで,荷造り用のビニール紐と軍手二双
を購入した。
被告人らは,同日午後7時ころ,B方を訪れ,室内に入れてもらい,Bに
借金を申し込むと貸してもらうことができたため,現金をかなり持っているもの
と判断し,Bを殺害する意思を固めた。そして,Bを外に連れ出して殺害した
上,B方に立ち戻って金品を強奪する旨意思を相通じ,甘言を弄してBをドライ
ブに誘い,同日午後10時ころ,被告人が運転する自動車にBを乗車させて出発
し,人気のない殺害場所を探し回り,翌29日午後2時ころ,本件犯行現場の林
道に至り,強盗殺人の犯行を遂げた。
(2) 以上の認定事実を前提に,本件犯行に至る経緯及び犯行の動機についてみ
てみると,被告人は,昭和48年10月に強盗殺人という重大事件を起こし,無
期懲役の刑を受けたが,まじめな服役態度や社会内での更生及び贖罪の意思を示
していたことに加え,親族による身元引受けや就職先が確保され,更生環境が整
備されていることが評価されて,服役開始後約14年9か月という比較的早い段
階で,仮出獄を許されたのであり,無期懲役の受刑者としては,かなり恵まれた
環境の下で仮出獄の生活を開始したということができる。それにもかかわらず,
賭け事に手を出さないという仮出獄の条件に反して,パチンコにのめり込んで借
金を繰り返し,妻や母からパチンコをやめるように忠告されても従わず,不審に
思った保護司から生活状況を尋ねられた際も,正確な報告をしないでごまかし,
適切な生活指導を受ける機会を自ら逸している。そして,勤務先に対する背信行
為や同僚と喧嘩したことなど身勝手な理由により,解雇されたり退職したりし
て,自ら安定した収入の途を閉ざし,無計画な生活を送り,いよいよ借金の返済
資金に窮し,姉の紹介により好意で茶を購入してくれた被害者に狙いを付け,し
かも,Aから盗みを提案された際,被告人は,無期懲役刑の仮出獄中であること
から,小さな盗みでも発覚した場合には仮出獄が取り消されて長期の服役にな
る,どうせやるなら大きな犯罪をやった方が良いなどと考え,一攫千金を狙うと
ともに,犯行が発覚しないようにするため顔見知りの被害者を殺害することとし
て,本件強盗殺人を計画し,実行したのである。被告人は,仮出獄の趣旨を逸脱
して,遊興に溺れた生活を送っていたのであり,本件犯行に至った経緯は甚だ芳
しくなく,犯行動機の悪質性,反社会性は顕著であり,酌量の余地は全くない。
Posted by のんのん at 17:03│Comments(0)