2010年05月01日
加茂市処分差止,取消請求事件
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○ 主文
一 被告加茂市に対する本件訴えをいずれも却下する。
二 被告加茂市長に対する本件訴えのうち、「被告加茂市長が、平成四年三月二四
日、学校法人加茂暁星学園との間で締結した別紙物件目録記載一の(一)ないし
(八)の土地についての無償譲渡契約及び同年六月三〇日、同学園との間で締結し
た別紙物件目録記載二の(一)及び(二)の土地についての無償譲渡契約をいずれ
も取り消す。」との訴え、「被告加茂市長は、学校法人加茂暁星学園との間で、同
学園の四年制大学建設事業に関し、被告加茂市が同学園に建設事業費寄付金を交付
する旨の寄付金契約を締結してはならない。」との訴えのうち既に締結された平成
四年度分九七九〇万円の寄付金契約の締結の差止めを求める部分、及び「被告加茂
市長が、平成四年七月三〇日、学校法人加茂暁星学園の四年制大学建設事業に関し
て、被告加茂市収入役に対して行った建設事業費寄付金五八〇〇万円についての支
出命令を取り消す。」との訴えをいずれも却下し、その余の請求をいずれも棄却す
る。
三 被告加茂市収入役に対する本件訴えのうち、「被告加茂市収入役が平成四年七
月三〇日、学校法人加茂暁星学園の四年制大学建設事業に関して行った建設事業費
寄付金五八〇〇万円についての支出行為を取り消す。」との訴えを却下し、その余
の請求を棄却する。
四 訴訟費用は原告の負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告加茂市に対し、
(一) 加茂市議会が平成三年度加茂市一般会計補正予算第三号(第六七号議案)
について、平成三年一一月二五日に可決した議決を取り消す。
(二) 加茂市議会が平成三年度加茂市一般会計補正予算第四号(第六九号議案)
について、平成三年一二月二一日に可決した議決を取り消す。
(三) 加茂市議会が平成四年度加茂市一般会計予算(第二号議案)について、平
成四年三月二四日に可決した議決を取り消す。
(四) 加茂市議会が平成三年度加茂市一般会計補正予算第七号(第二五号議案)
について、平成四年三月二四日に可決した議決を取り消す。
(五) 加茂市議会が第三〇号議案について、平成四年三月二四日に可決した議決
を取り消す。
(六) 加茂市議会が平成四年度一般会計補正予算第一号(第四二号議案)につい
て、平成四年六月三〇日に可決した議決を取り消す。
(七) 加茂市議会が第四五号議案について、平成四年六月三〇日に可決した議決
を取り消す。
2 被告加茂市長に対し、
(一) 被告加茂市長が、平成四年三月二四日、学校法人加茂暁星学園との間で締
結した別紙物件目録記載一の(一)ないし(八)の土地についての無償譲渡契約及
び同年六月三〇日、同学園との間で締結した別紙物件目録記載二の(一)及び
(二)の土地についての無償譲渡契約をいずれも取り消す。
(二) 被告加茂市長は、学校法人加茂暁星学園との間で、同学園の四年制大学建
設事業に関し、被告加茂市が同学園に建設事業費寄付金を交付する旨の寄付金契約
を締結してはならない。
(三) 被告加茂市長が、平成四年七月三〇日、学校法人加茂暁星学園の四年制大
学建設事業に関して、被告加茂市収入役に対して行った建設事業費寄付金五八〇〇
万円についての支出命令を取り消す。
(四) 被告加茂市長は、本件口頭弁論終結時以降、学校法人加茂暁星学園の四年
制大学建設事業に関して、被告加茂市収入役に対し建設事業費寄付金についての支
出命令をしてはならない。
3 被告加茂市収入役に対し、
(一) 被告加茂市収入役が平成四年七月三〇日、学校法人加茂暁星学園の四年制
大学建設事業に関して行った建設事業費寄付金五八〇〇万円についての支出行為を
取り消す。
(二) 被告加茂市収入役は、本件口頭弁論終結時以降、学校法人加茂暁星学園の
四年制大学建設事業に関して、建設事業費寄付金についての支出行為をしてはなら
ない。
4 訴訟費用は被告らの負担とする。
二 請求の趣旨に対する被告らの答弁
1 被告加茂市
主文一、四と同旨
2 被告加茂市長
(一) 請求の趣旨2(一)ないし(三)をいずれも却下する。
(二) 同2(四)を棄却する。
(三) 訴訟費用は原告の負担とする。
3 被告加茂市収入役
主文三、四と同旨
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、被告加茂市の住民である。
2 加茂市議会の議決
(一) 加茂市議会は、平成三年一一月二五日、被告加茂市の平成三年度一般会計
予算の歳出予算に、別紙物件目録記載一の(一)ないし(八)の土地(以下「本件
一の土地」という。)の取得費として一億一七四〇万九〇〇〇円を計上することを
内容とする平成三年度一般会計補正予算第三号(第六七号議案)を可決した。
(二) 加茂市議会は、平成三年一二月二一日、被告加茂市の平成三年度一般会計
予算の債務負担行為に、学校法人加茂暁星学園(以下「暁星学園」という。)が建
設する四年制大学(新潟経営大学、以下「新潟経営大学」という。)の建設事業費
寄付金として八億八三五七万一〇〇〇円を計上することを内容とする平成三年度一
般会計補正予算第四号(第六九号議案)を可決した。
(三) 加茂市議会は、平成四年三月二四日、被告加茂市の平成四年度一般会計予
算の歳出予算に、新潟経営情報大学(仮称)建設事業寄付金等として九八六六万二
〇〇〇円を計上することを内容とする平成四年度一般会計予算(第二号議案)を可
決した。
(四) 加茂市議会は、平成四年三月二四日、被告加茂市の平成三年度一般会計予
算中に債務負担行為として予算計上した新潟経営大学建設事業費寄付金を一〇億八
三五七万一〇〇〇円に増額補正することを内容とする平成三年度一般会計補正予算
第七号(第二五号議案)を可決した。
(五) 加茂市議会は、同日、被告加茂市が暁星学園に対し本件一の土地を無償で
譲渡することを内容とする第三〇号議案を可決した。
(六) 加茂市議会は、平成四年六月三〇日、被告加茂市の平成四年度一般会計予
算の債務負担行為に、新潟経営大学建設事業費寄付金として九八二九万円を計上す
ることを内容とする平成四年度一般会計補正予算第一号(第四二号議案)を可決し
た。
(七) 加茂市議会は、同日、被告加茂市が暁星学園に対し別紙物件目録記載二の
(一)及び(二)の土地(以下「本件二の土地」という。)を無償で譲渡すること
を内容とする第四五号議案を可決した(以下、前記(一)ないし(七)の加茂市議
会の議決を「本件各議決」という。)。
3 被告加茂市長の土地無償譲渡契約締結
(一) 被告加茂市長は、平成四年三月二四日、暁星学園との間で本件一の土地を
被告加茂市が無償で譲渡する旨の契約を締結した一以下「本件無償譲渡契約一」と
いう。)。
(二) 被告加茂市長は、平成四年六月三〇日、暁星学園との間で本件二の土地を
被告加茂市が無償で譲渡する旨の契約を締結した(以下「本件無償譲渡契約二」と
いう。)。
4 被告加茂市長の支出命令
被告加茂市長は、平成四年七月三〇日、新潟経営大学建設事業に関して、被告加茂
市収入役に対して建設事業費寄付金五八〇〇万円についての支出命令を行った(以
下、新潟経営大学建設事業に関して被告加茂市長が行う建設事業費寄付金について
の支出命令をすべて「本件支出命令」という。)。
5 被告加茂市収入役の支出行為
被告加茂市収入役は、平成四年七月三〇日、新潟経営大学建設事業に関して、建設
事業費寄付金五八〇〇万円についての支出行為をした(以下、新潟経営大学建設事
業に関して被告加茂市収入役が行う建設事業費寄付金についての支出行為をすべて
「本件支出行為」という。また、本件各議決、本件無償譲渡契約一及び二、本件支出命令、本件支出行為、並びに被告加茂市長と暁星学園との間の、被告加茂市が同
学園に対して新潟経営大学建設事業寄付金を寄付する旨の寄付金契約(以下「本件
寄付金契約」という。)を総称して、「暁星学園に対する公の財産の支出等」とい
う。)。
6 暁星学園に対する公の財産の支出等の違法性
(一) 暁星学園に対する公の財産の支出等は、公の支配の及ばない教育事業に対
して公金その他の公の財産を支出することであり、憲法八九条後段に違反する。
(二) 暁星学園の母体は、宗教法人であり、役員も同宗教法人の構成員が大半を
占め、その教育内容においても毎朝座禅を強要されるという宗教性が認められるも
のであるから、かような暁星学園に対する公の財産の支出等は、憲法二〇条一項後
段(特権の付与禁止)、同条二項に違反する。
(三) 暁星学園に対する公の財産の支出等は、公益上の必要性がないから、地方
自治法二三二条の二に違反する。
(四) 暁星学園に対する公の財産の支出等は、加茂市教育委員会の申出によらな
いで行われたものであり、また本件各議案の提出に当たって、同委員会の意見書の
提出もないから、地方教育行政の組織及び運営に関する法律二三条及び二九条に違
反する。
7 被告加茂市長は、将来、暁星学園との間で本件寄付金契約を締結し、被告加茂
市長及び被告加茂市収入役は、一一億二三八六万一〇〇〇円もの新潟経営大学建設
事業に関する建設事業費寄付金の違法な支出手続をすることが相当の確実さをもっ
て予測されるが、その金額からみて、被告加茂市に回復の困難な損害を生ずる恐れ
があることは明らかである。
8 監査請求
原告は、平成三年一一月三〇日、加茂市監査委員に対し、左記のとおりの請求の趣
旨を内容とする措置請求を行ったところ、平成四年二月三日、(一)ないし(三)
について理由がないとして棄却し、(四)及び(五)は不適法であるとして却下す
る旨の監査結果が原告に通知された。
記
(一) 加茂市の長は、暁星学園に対し寄付又は財産の処分、譲渡の契約締結をし
ない。
(二) 加茂市の長は、暁星学園に対する寄付又は財産の処分等の議案を提出しな
い。
(三) 加茂市収入役は、同処分等に係る支出をしない。
(四) 加茂市議会は、平成三年一一月二五日の補正予算決定を取り消し、本件に
係る額を減額して修正決定する。
(五) 加茂市議会は、平成三年一二月二一日の予算決定を取り消し、本件債務負
担分を減額して修正する。
しかしながら、原告は、右監査結果に不服があるので、地方自治法二四二条の二第
一項二号に基づき、本件各議決、本件無償譲渡契約一及び二、本件支出命令並びに
本件支出行為の取消し、同法同条項一号に基づき、本件寄付金契約、本件支出命令
及び本件支出行為の差止めをそれぞれ求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1ないし5及び8は認める。
2 同6は争い、同7は不知。
3 被告らの主張
(一) 原告の被告加茂市に対する各訴えは、被告加茂市に被告適格がないうえ
に、加茂市議会の議決は、地方自治法二四二条の二第一項二号の「行政処分」に該
当せず取消しの対象にもならないから、右各訴えはいずれも却下されるべきであ
る。
(二) 原告の被告加茂市長に対する訴えのうち請求の趣旨2(一)及び(三)の
訴え並びに原告の被告加茂市収入役に対する訴えのうち請求の趣旨3(一)の訴え
は、いずれも地方自治法二四二条の二第一項二号の「行政処分」に該当しない行為
の取消しを求めるものであるから、右各訴えはいずれも却下されるべきである。
(三) 原告の被告加茂市長に対する訴えのうち請求の趣旨2(二)について
被告加茂市長は、暁星学園との間で、遅くとも平成四年六月一一日までに被告加茂
市が暁星学園に寄付する新潟経営大学建設事業費寄付金の全額について、寄付金契
約を締結し終えているから、原告の右訴えは訴えの利益がなく、不適法である。
Posted by のんのん at 12:16│Comments(0)