悪意の不当利得の成否

のんのん

2010年09月08日 14:59

被告の悪意の不当利得の成否,及び法定利息の始期(争点②について)

(1) 原告は,前示第2の3(2)(原告の主張)のとおり,被告が悪意の受益者である旨を主張し,これに対し,被告は,前示第2の3(2)(被告の主張)のとおり,(a)本件弁済当時,被告が超過利息の受領についてみなし弁済が成立しないことを知りながら利得をしたことの主張立証責任は原告にあり,また,

(b)本件取引当時,自己がみなし弁済の要件を具備し,同弁済が成立しているとの主観的認識を有していた旨を主張している。

(2) そこで検討するに,民法704条所定の悪意とは,利得者が自己の利得に法律上の原因が存在しないことを知っていることをいうが,それをもって足り,利得発生の具体的な時期やその金額について確定的な認識を有していることを要しないと解するのが相当である。

これを金銭消費貸借契約についてみるに,(a)利息制限法1条1項は,制限利率超過の契約が,超過部分につき無効である旨を明確に規定しており,(b)これに対し,貸金業法43条は,同条所定の要件を具備した弁済は,利息制限法の上記規定にかかわらず,有効な弁済とみなす旨を定めているにすぎない。

また,(c)一般に,みなし弁済の要件の具備は,貸主において主張立証すべき事項と解されている。

そして,(d)制限利率超過の利率による継続的な金銭消費貸借取引において,上記(a)の無効な契約部分に基づいて超過利息に対する弁済が続いた場合,既存の借入債務への弁済金の充当によって,過払金が発生することは見易い道理というべきである。

以上の点を考慮すれば,制限利率超過の利率による継続的な金銭消費貸借取引について,

借金返済をしている個人が過払金の不当利得に対する貸主の悪意をいうためには,制限利率超過の利息の定め及びその弁済があったことを主張立証すれば足り,

②これに対し,貸主は,(ア)自己が当該取引に貸金業法所定のみなし弁済の規定の適用があると信じていた事実だけでなく,(イ)その信頼に正当な客観的根拠が存在することを主張立証しなければ,自己の悪意に関する借主の主張を排斥することができないと解するのが相当であるところ,本件に提出された前示第2の3(2)(被告の主張)掲記の各事情が,直ちに上記(イ)の正当な客観的根拠に該当するとは認められない。

(3) したがって,被告の前示(1)の主張は,直ちに採用できず,被告が不当利得時から悪意である旨をいう原告の主張には理由がある。

(4) そのほか,被告は,借主の合理的意思の推認を理由に,民法704条所定の法定利息は,最終取引日以降について請求できるにすぎない旨も主張しているが,上記1(2)の弁済充当に当たり,原告が被告主張の趣旨の指定をしたと認めるだけの根拠はなく,被告の上記主張も採用できない。